現在は英語の仕事をしているわたしですが、学生の頃は英語が苦手でした。
中学から高校まで英語のテストはだいたい平均点ギリギリ、高3の夏に英検準2級(高校中級程度)に落ちる始末。大学生になると英語で書かれた論文の解読に四苦八苦、社会人になってからは英語に出くわすたびに身構えてビクビクしていました。
ところが現在のわたしは英語を使って仕事をしています。業務内容は翻訳(日英/英日)、技術資料作成、文書チェック、文献調査、会議資料作成など。TOEICは940を取りました。ちなみに海外経験はありません。
こんなわたしなので、英語への苦手意識はとてもよく分かりますし、苦手を乗り越えてしまえば英語はとても便利な道具で、確実に世界を広げてくれることも知っています。
この記事があなたの苦手意識克服に役立てばとても嬉しいです。
この記事は英語に苦手意識がある大人が英語学習をやりなおすことを想定しており、高校生以下の受験英語対策や、英語を生業としている人向けではありませんが、それでもお付き合いくださるならウェルカムです!
「英語のためだけの勉強」ならしない方がいい
いきなり真逆のことを書いてすいません。
わたしは正直、「英語のためだけの勉強」はしない方がいいと思ってます。
なぜなら、英語が苦手な人にとって英語のためだけの勉強はおもしろくない。もっとぶっちゃけて言えば、苦痛以外のなにものでもないからです。
勉強嫌いなこどもがますます勉強嫌いになるのは、したくもない受験のためだけにまったくおもしろくない勉強をさせられているからです。
英語の苦手な大人も同じです。英語のためだけに英語の勉強をしても続きません。続かなかったらますます英語が苦手になるという悪循環に陥ります。
Step 1. 英語を使って何をする?=「目的」を設定する
というわけで、英語の勉強を始める前に意識したいのは「英語を使って何をしたいか」、つまり学習の「目的」です。
わたしの経験上、なんとなくキラキラした夢や憧れを描くよりは、リアルで生々しい欲求を原動力にする方が続きます。時給を上げるとか、クソみたいな会社をやめて転職するとか、独立してフリーランスになるとか、愛をささやくとか、最高ですね。ま、大人ですから「表向きは」キラキラしたものを目的に掲げておいた方が格好はつくと思いますけど。
英語学習がイヤになってきたときにやる気を取り戻すためにも、学習の「目的」をはっきりさせることが大切です。学習の「目的」って、言ってみればしんどいことを耐えた先にあるごほうびになるものですからね。
また、英語学習の目的によって、4つのスキル(読む/書く/聞く/話す)のうち、重点的に伸ばすべきスキルやレベル感も自然に決まります。4つのスキルをバランスよく伸ばすのが理想ですけども、時間は有限なので、必要なスキルを中心にすれば無駄を減らすのが得策。
- 英語圏への旅行が目的なら、現地の観光情報の収集(読む)や、現地の代理店とのやり取り(読む/書く)、現地で出会う人との会話(聞く/話す)程度ができるようになればよいので、学習したい分野は旅行や現地の文化に関するもの、レベル感は日常会話程度です。
- 論文を専門の雑誌に掲載することが目的なら、先行研究の収集(読む)、論文作成(書く)、雑誌や査読者とのやりとり(読み/書き)ができるようになればよいので、学習したい分野は研究テーマに関するもの、レベル感は技術英語です。この場合、日常会話はあまりできなくても問題ないことになります。
- 乳幼児育児中のパパママなら、これからこどもと一緒に英語を楽しむことを目的にするのもいいかもしれません。こどもが小学校に上がる頃までに4つのスキルを英語の宿題に付き合えるレベルにしておくのはどうでしょう。
こんな学習をすると偏るのではないかと心配になるかもしれませんが、英語を「したいことを実現するための道具」と考えるならば、偏りは問題ありません。また、完璧を目指す必要もない。目的を果たすために使える道具になればOKです。
学習の目的がブレるのも問題ありません。ひとの気持ちはうつろうものですし、環境も日々変わりますので、その時々で目的がはっきりしていればOKです。
英語を使って何をする?〜わたしの「目的」
わたしは以前は実験系の仕事をしていたものの、なんとなく合わないと感じていました。そのとき、隣の部署でデスクワークをしている人たちは、実験報告書をまとめて書類を作り、日本語を英語に、英語を日本語に訳す仕事をしていました。それを見て、英語ができるだけで、おもしろそうな情報にたくさん触れることができて、しかも楽そうでいいなあと思いました。
わたしの場合、英語学習の目的は「楽でおもしろい仕事をしたい」だったのです。我ながら、なんとも呆れた動機で今までやってきたなあと思います。
ちなみに、楽でおもしろそうに見えた仕事は、やってみるとちっとも楽ではありませんでした。だまされた!……まあ、おもしろいのでよしとします。
Step 2. まずは基礎固め~わたしのおすすめはiKnow!
あくまで目安ですが、TOEICのスコアが600未満の方は基礎力をつけるところから始めるのがよいです。
感覚的には、読み書きなら辞書を引く回数が多くてあまり進まない状態。英会話なら聞き取れなかったり、言葉がなかなか出てこなかったりで会話がツラい状態。英語に対する苦手意識もけっこう強い状態です。
それ以上のレベルの方はこのステップは飛ばしてOKです。
読めない(聞けない)ものは書けない(話せない)
ここで意識したいのは「読めない(聞けない)ものは書けない(話せない)」ということ。
わたしの感覚では、語彙が豊富な順に「読める語彙→聞ける語彙→書ける語彙→話せる語彙」です。こどもの場合は読める語彙よりも聞ける語彙が多いですし、読み書き中心の学習をしていて聞ける語彙よりも書ける語彙が多くなっている人もいるでしょうから、個人差はあります。
ただ、読める語彙より書ける語彙の方が多いことや、聞ける語彙より話せる語彙の方が多いことはまずありません。そこで、まず読める/聞ける語彙を増やすことが近道です。
また、高校までの日本人の英語学習は読み書きばかりに力を入れており、聞いたり話したりする時間が圧倒的に足りていないので、読める語彙に比べて聞ける語彙がすごく少ないことも意識しておきたいポイントです。
それでは、iKnow! のわたしなりの活用法を紹介しますね。
iKnow!とは?
iKnow!とは、DMM.comが提供する英語学習プラットフォームです。
月額利用料は1ヶ月プランなら1480円、12ヶ月プランなら780円です(2018年7月現在)。ランチ1回分ですね。使い方についてはiKnow! ガイドを読んでください。
iKnow!でできること
iKnow!でできることは語彙の基礎固めです。レベルや学習目的に応じたコースで4つのスキル(読む/書く/聞く/話す)をフルに使って学習します。
具体的には、単語を目で見て、耳で聞き、書き取り、発音し、さらに、学習した単語を含む文を目で見て、耳で聞き、書き取り、発音するという流れをくりかえします。発音は必須ではありませんが、書き取りついでに聞いた単語や文を真似すると会話の練習につながるのでいい感じです。
コースをいったん終了したあとは、記憶を定着させるのにちょうどよい時期にiKnow!が再学習を提案してくれるので、表示される順に復習すればOKです。
iKnow!のコースの選び方
iKnow!には中学生レベルから留学準備、ビジネス英語まで様々なレベルのコースがあります。
コースを選ぶポイントは、簡単すぎるくらいのレベルからはじめること。ジャンルも一般的な「英会話マスター」から始めるとよいと思います。
このステップはいわば筋トレなので、負荷が大きいと続きません。簡単なコースでも文を使った学習が含まれているので、いろいろな単語や文型に触れることができます。
学習の分量ですが、始めは1日1コースや2コースでもしんどいと感じるはずなので、1コースや2コース程度から始めて細く長く続けるのがよいです。慣れれば5コースくらい一気にやっても平気になりますよ。
「英会話マスター」が終われば、てきとうに興味のあるコースを探します。中級/中上級コースがしんどくなくなる頃には、辞書を引く回数がだいぶ減り、聞きとれる単語や文がかなり増えているはず。
上級コースにはかなりマニアックな単語も出てくるため、興味や学習する理由があればどうぞといった感じです。
Step 3-1. インプット量を増やす
基礎力がある程度つけば次に進みましょう。インプット量を増やします。
外国語は母国語以上のレベルにはならない
ここで意識したいのは「外国語は母国語以上のレベルにはならない」ということ。
日本語でわからないことは英語でもわからない。逆に、日本語でなじみのあるものは英語になってもわかりやすい。
わたしは、語彙の基礎力をつけながら「日本語」をたくさん読み、その後「英語」を読み始めました。
興味の持てる情報を日本語と英語の両方で読む
読むものはあなたが興味の持てる情報です。日本語でなじみのあるものは英語になっても読みやすい上、多少難しくても読んでやろうと思えます。
特に、日本語版がある洋書や英語のニュースサイトなど、日本語と英語の両方が手に入るものは教材としてちょうどよいです。日本語版を読んでから英語版を読むと内容が分かりやすいですし、英語版で知らない単語に引っかかるたびにいちいち辞書を引く必要もありません。見くらべて意味を推測できます。(さすがにまったく見たことのない単語は辞書を引いた方がよいとは思いますが……)。
日本語と英語の表現の違いなど眺めてみるのもおもしろいです。直訳じゃないのが分かるはず。
興味の持てないものは最悪の教材!
興味のない分野の洋書や、英語教材をとりあえず読んでみるというのは最悪です。教材として推薦されていても合わないものは合わない。やってみればわかりますが、正直むちゃくちゃつらい。わたしは実際に放り投げたので、ほんとうにまったくおすすめしません。
この時期にリスニング力を伸ばす方法
わたしは、リスニング教材には手を広げませんでした。iKnow!で学習をしていれば、英語を聞いている時間が必ずありますし、英会話を始めれば同時に英語を聞く機会が得られると思ったからです。
実のところ、それ以上手広くやる時間がなかったともいう……。
Step 3-2. アウトプット量を増やす
さらに、アウトプットを増やすために英会話にも取り組みました。
実は、iKnow!で学習する以前にもやってみたことはありました。が、いきなりグループレッスンに参加したのでほとんどしゃべれずに聞くだけになってしまい、おっくうに感じて続きませんでした。
表現したいことがないと表現できない
ここで意識したいのは「表現したいことがないと表現できない」ということです。目の前の人に伝えたいこと、共有したいことはありますか? それがないと、いくら英語のスキルが伸びても表現できません。英語のためだけの勉強をおすすめしないのは、これも理由です。
はじめての英会話にはオンライン個人レッスンが手軽でおすすめ
英会話のレッスンには、個人/グループ、オフライン/オンラインといろいろありますが、はじめての英会話にはオンラインの個人レッスンが手軽でよいと思います。
オンラインレッスンをおすすめするのは、お試しレッスンがあり、費用が比較的安く、自宅から好きな時間に受講できるから。
個人レッスンをおすすめするのは、グループレッスンには講師のファシリテート能力によって一言もしゃべることができないまま終わってしまうリスクがあるから。もちろん講師のファシリテート能力が高ければ初めてでも会話に入れるとは思いますが、他の参加者がとにかくしゃべりたいタイプだとけっこうつらい。個人レッスンの時間はすべて自分がしゃべってよい時間なので、はじめては個人レッスンがよいと思います。
ちなみにDMM英会話の有料会員になるとiKnow! が無料で使えるので、iKnow! ユーザにはDMM英会話がおすすめです。月額料金は5980円なので(毎日1レッスン/25分)、飲み会1回分強ですねー。
オンライン英会話についてはこちらの記事で詳しく書いています↓


オフラインのグループレッスンや英会話カフェは応用編
わたし自身がほとんどしゃべれなかった経験から、はじめての英会話にグループレッスンはおすすめしませんが、会話自体にある程度慣れてから、聞く/話すスキルを高めたいならば、オフラインのグループレッスンや英会話カフェもよいと思います。
会話に慣れると、オフラインの空気感は楽しいものです。ジェスチャーや表情をコミュニケーションの一部として使えるのもよいし、会話がどういう方向に展開するかわからないので、スリルも楽しめます。
格安でオフライングループレッスンを受ける裏技
お住まいの地域によりますが、地域の生涯学習セミナーを利用して格安でオフラインのレッスンを受講することもできます。
わたしが受講したものは90分×20回で18,000円くらいだった記憶。講師1人に受講者20人超でしたけどねー。あと、シニア世代が多かった。シニア世代は元気なのでガンガン行かないと会話に入れませんよ!
特別なニーズがあるならオフラインの個人レッスン!
教室や先生によりますが、オフラインの個人レッスンは会話だけではなく、書いた文章を添削してもらったりなど、特別なニーズに対応してくれる場合があります。そのぶんレッスン料は高いです。
特にメリットを感じなかったのですぐやめました。
英会話のついでに「書く」トレーニング
書く能力については、基礎固めをした上で英会話に取り組んでいるうちに自然と伸びます。心配しなくても、しゃべれることはだいたい書けるようになるのです。ただし、書く能力をぐっと向上させるには、英会話のレッスンをやりっぱなしにせず、レッスンのまとめをするのがおすすめ。
わたしは、レッスンの後に復習の時間を作って、使った表現や先生の説明を英語と日本語でまとめていました。書くうちに、あいまいなところや間違えていたところ、書き言葉と話し言葉の違いなどに気づいて調べたりするので、英会話のレッスンの効果も上がります。
Step 4. TOEIC900対策
「英語のためだけの勉強ならしない方がよい派」のわたしとしてはとても不本意ながら、これから英語のためだけの勉強の話をします。
TOEIC対策はTOEIC用の問題集を解くことに尽きる
わたしの場合、iKnow!での基礎固めと英会話でTOEICスコアは860まで伸びましたが、900の壁が厚かったのでTOEIC用の勉強をしました。
TOEIC用の勉強とはすなわち、まずはTOEIC用の問題集を1冊買ってきて、すらすら解けるようになるまでひたすら解くことです。わたしの使った問題集は3周することをおすすめしていたので、素直に3周しました。
これを言うと身も蓋もありませんが、基礎固めさえできていれば、TOEICは慣れとテクニックでスコアを伸ばせます。
TOEICのスコアが必要なければ受けなくていい
この記事のタイトルにもTOEICと書いているので少し矛盾を感じるかもしれませんが、最初に考えた目的を果たすためにTOEICのスコアが必要なければ、TOEICを受ける必要もないし、TOEICのための勉強も必要ありません。
学習の成果の目安にもなりますし、履歴書にも書けるので、ちょっと力試し程度に受けるのはありだと思います。ただ、テクニックでスコアが左右される面もあるので絶対的なものでもない。
TOEICのスコアよりも「英語を使って何をできるようになったか」が大切です。
Extra. 文法学習
文法学習についてはここまでまったく書いてきませんでしたが、単にここまでの過程で文法を集中して学習した時期がなかったからです……。
文法は英語に慣れてからの方が取り組みやすい
わたしの場合ですが、ある程度アウトプットができるようになった頃に「どうしてこういう書き方をするの?」「このパターンは見たことがないなあ」と感じることが増え、ようやく文法の参考書を買ったという感じです。
ほんとうに個人的な意見ですが、わたしの経験上、文法はある程度英語に触れてからの方が、すっとしみこんできますし、英語への苦手意識がなくなってからしっかり取り組めばよいと思います。苦手意識があるうちは「苦痛な暗記モノ」になりがちで、おもしろみを味わえないからもったいない。
ちなみに現在は英語で仕事をしている関係上、基礎を外すわけにはいかなくなったので、時々復習しています。復習のたびに新たな発見がある。
文法のおすすめ参考書
文法のおすすめ参考書は、大西泰斗先生の「1億人の英文法」と、定番の「表現のための実践ロイヤル英文法」です。何冊も読んではいるんですが、最後に手元に残ったのはこの2冊でした。
前者は英語で正しく表現するための英文法、後者は話すための英文法をうたっており、いずれも英語で表現したい人向きの内容。
英語が苦手な人の最初の文法参考書としては「1億人の英文法」をおすすすめします。イラストがかわいくて直感的にわかるので大好きです。大西先生は語学番組もおもしろいので要チェックですよ(完全に脱線!)
まとめ︰制約を希望にかえよう
まとめとして、各ステップのはじめに書いた「意識しておきたいこと」をあらためて書き出します。
- 読めない(聞けない)ものは書けない(話せない)
- 外国語は母国語以上のレベルにはならない
- 表現したいことがないと表現できない
これはいろんなところで言いつくされていることで、私のオリジナルではありませんが、こうやって並べるとなんともネガティブですね。なので、ちょっとひっくり返してみました。
- 読める(聞ける)ものは書ける(話せる)ようになる
- 外国語は母国語程度のレベルにはなれる
- 表現したいことがあれば表現できるようになる
こうやってひっくり返してみると、少しだけ希望がもてるような気がしません?
最初にも書きましたが、苦手を克服してしまえば英語はとても便利な道具になりますし、確実にあなたの世界を広げてくれますよ。それでは良い旅を。