こんにちは、つむり @TsumuRi です。
派遣契約を有期労働契約から無期労働契約に転換してしばらく経ち、当事者の立場でインターネットの情報を見ていると、表示されるサイトに間違いが散見されるのが気になり始めました。
たとえば、いわゆる正社員型派遣の話を無期雇用転換の話として紹介したり、詳しくない人が書いたのかしら?(もしくは意図的に混同してる?)と、いろいろ思うところがありまして……
そこで当記事では、派遣社員の無期雇用転換について実体験に基づいて紹介します。
(このブログを含め)インターネットの情報を鵜呑みにしないようお気をつけください
もっとも正確な情報源は公的機関と所属する派遣会社です。
- 制度の概要:厚生労働省の有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
- 個別具体的な話:派遣会社の営業担当
ここまでで言いたいことは書ききった感じですが、個人的な経験談に興味があれば引き続きご覧いただけると嬉しいです。
厚生労働省のポータルサイトを見ながらだと、より分かりやすいと思います。
無期雇用転換ルールとは
無期雇用転換ルールとは、労働契約法の改正により、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。
引用元:厚生労働省:有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
登録型派遣(有期労働契約)で働く派遣社員は、同一の派遣会社から派遣されている期間が通算5年を超えたときに無期労働契約への変更を申し込めるようになります。
「申し込める」というのがミソで、無期労働契約に変更したくなければ有期労働契約のまま働くことができます。
ちなみに、最初にチラリと触れた正社員型派遣は、まず派遣会社の正社員として雇用契約を結んでから派遣先企業に派遣されるもので、転換型無期雇用派遣社員とは採用方法や待遇が異なります。
月給制で、ボーナスがあるとかないとか聞きますね
【体験談】転換型無期雇用派遣社員になるまでの経緯
私が転換型無期雇用派遣社員になるまでの経緯を紹介します。
同一派遣会社との契約期間が通算5年を超える
派遣会社の営業担当から、契約期間が通算5年を超えたと連絡を受けました。
私本人は、無契約の期間もあったので関係ない話だと思ってました
また、使用者(派遣会社)には無期雇用転換ができることを説明・周知する義務は課せられていません(詳細:Q15)。
親切な派遣会社ばかりとは限らないので、無期雇用転換を狙うなら自分でも計算してみてください。
派遣会社から無期雇用契約の条件を説明される
営業担当との定期面談で無期雇用契約の条件について書面をもらい、以下のような説明を受けました。
- 無期雇用転換ルールの概要
- 派遣会社独自の無期雇用契約のルール
文書を見ながら説明を聞き、気になる箇所を都度質問する形だったので、給与体系や派遣先が変わる時の扱いなどは特に突っ込んで説明を聞きました。
派遣会社の定める方法で申し込む
説明から数か月後に無期雇用転換を申し出ました。
契約更新を1回挟んだ記憶があります
私は、いわゆる3年ルールに縛られず同じ派遣先で働き続けたいと思っていましたし、派遣先の指揮命令者からも「可能なら長く働いてほしい」と言われていました。3年を超えても同じ派遣先で働けそうな感触があったので、乗らない手はないと思いました。
派遣会社の営業担当に連絡して無期雇用転換を申し込んでから数日で無期労働契約に変更する旨が文書で届きました。
転換型無期雇用派遣社員のメリット:「3年ルール」の適用外
唯一にして最大のメリットは「いわゆる3年ルール」の適用外になることです。
いわゆる3年ルールとは?
①派遣先事業所単位での期間制限
厚生労働省:派遣で働く皆さまへ~平成27年労働者派遣法改正法が成立しました~(pdf)
同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則、3年が限度となります。
②派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。
一般派遣社員は上記①②に基づく「抵触日」が設定されており、抵触日以降は同じ派遣先の同じ部署では働けません。
抵触日までの期間が最大3年なので3年ルールと呼ばれています。
①による抵触日が②による抵触日より短い場合は就業開始から抵触日までの期間が3年に満たないこともあります。
派遣先の居心地や待遇がよければ抵触日を超えても働きたいですよね。派遣先から長くいることを望まれる場合もありますし。
このような場合は、無期雇用転換して抵触日以降も働けるのは大きいと思います。
3年ルールが邪魔だった私には渡りに船
もちろん、現在の派遣先で長期間働きたくなければ3年ルールの適用外になるメリットはないので、無期雇用転換する理由はまったくありません。一般派遣社員のままの方が身軽でよいです。
特に、派遣先を変えたいと思っているときに無期雇用転換するのは絶対にナシです。
転換型無期雇用派遣社員のデメリット
無期雇用派遣社員は派遣先を選べない
転換型無期雇用派遣社員の最大のデメリットは「派遣先を選べない」ことです。
満足できる派遣先で働き続けられるうちはよいですが、問題は派遣先から要らないと言われた時。
次の派遣先を決めるのは派遣会社です。
一般派遣社員は条件のよい派遣先が出てくるまで断りまくれます(なんなら他社でもマッチングしまくれます)が、無期雇用派遣社員はそれが通りません。
次の派遣先について勤務地や業務内容の希望は出せますが、あくまでも考慮する程度です。次の派遣先は派遣会社命令で決まります。
この点、自由でいるために派遣社員を選んだ方には圧倒的なデメリットとしか言えません。
どうしても折り合えない場合はどうなるのかと営業担当者に尋ねたところ、「その場合は退職ですかね~」と軽~く言われました。
期間の定めがなくても普通に会社員だもん、イヤになったらやめるでいいわ
なお、退職した無期雇用派遣社員に有期雇用契約で別の派遣先を紹介できるようになるまである程度の期間が必要になる派遣会社もあるようですのでご注意ください。
無期雇用派遣社員は直接雇用されにくい(かも)
これまで派遣社員が抵触日以降も同じ会社の同じ部署で働くためには直接雇用されるしかありませんでしたが、無期雇用転換すると抵触日以降も派遣社員のままで働けるようになります。
したがって、無期雇用派遣社員を直接雇用するのは派遣先によほど積極的な理由がある場合だけになるかもしれません。直接雇用を狙う方にとっては明確なデメリットです。
私個人は組織運営や部署間の調整など高いコミュニケーション能力が必要な業務がものすごく苦手で、関わることすらイヤなので、厄介な業務を回避できて自分の作業に没頭できる派遣社員の立場が気に入っています。したがって、直接雇用されないことはさしたるデメリットとは感じていません。
必ずしも直接雇用がいいとは限らない
今後の身の振り方を考えて慎重に検討してくださいね。
一般派遣社員と転換型無期雇用派遣社員の待遇を比較
上に挙げた項目以外で、有期労働契約の派遣社員(一般派遣社員)と、無期労働契約の派遣社員(転換型無期雇用派遣社員)の待遇の違いをざっくり紹介します。
待遇は派遣会社の規定によるので、あくまで一例ね
派遣先との契約は数ヶ月ごと更新(変化なし)
一般派遣社員は数ヶ月ごとに契約を更新します。
私は、転換型無期雇用派遣社員になった後も数ヶ月ごとに派遣先との契約を更新しています。
一般派遣社員の頃は3ヶ月ごとだったのが、無期雇用派遣社員になってからは半年ごとの更新になったくらいで、数ヶ月ごとに更新する点には違いがありませんでした。
何にも変わらない!と思った方へ
一般派遣社員は派遣会社との契約も数ヶ月ごとです。
無期雇用派遣社員は、派遣会社との契約は期間の定めがないことになっています。名目上。
モヤっとしますね。私もモヤっとしています。
現在の派遣先から要らないと言われた時に違いが分かるのかもしれません。
分かったら追記しますが、追記する日が来ないことを祈ってください
転換型無期雇用派遣社員には定年がある
無期雇用派遣社員には定年があります。
現在の派遣会社では60歳の誕生日が来る月の末日をもって退職となります。
ただし申し出によって65歳の誕生日が来る月の末日まで延長できます。この点は正社員と同じです。
一般派遣社員とは就業規定や時給設定が異なる
転換型無期雇用派遣社員は、一般派遣社員とは就業規定や時給設定が異なります。
就業規定について
無期雇用派遣社員向けの就業規定をもらいました。
一般派遣社員用と大きく変わる点はなく、働くうえで影響はありませんでした。
就業規定はわざと分かりにくく書いているのかしらと思うくらいには読みづらいので、営業担当者と話せるときに無期雇用転換の前後で何が変わるのか、要点をまとめて教えてもらった方がいいと思います。
文書をもらったうえで細かく質問しました
時給について
転換型無期雇用派遣社員の時給は職種・職能ごとに決まります。
一般派遣社員の時給は案件ごとだったので、ややや!と思いました
無期雇用転換の説明を受けた際に転換後の時給を提示されましたが、転換前の時給を考慮して調整が入った結果、無期雇用転換の前後で時給は変わらず。
無期雇用転換後に派遣先を変わる場合も、職種・職能ごとの時給および前派遣先での時給を考慮して、差が大きくなりすぎないよう調整すると伺いました。
インターネット上で無期雇用派遣社員は昇給は期待できないと書いた記事を見つけましたが、無期雇用転換後に時給交渉ができないわけではありません。実際私は無期雇用転換後に時給を上げてもらいました。
同一労働同一賃金が導入されたので、仕事がレベルアップすれば交渉の余地はあるのではないでしょうか。
ケースバイケースなので派遣会社の営業担当者に聞いてみてください。
転換型無期雇用派遣社員には通勤交通費が出る?
私の場合、通勤交通費は時給とは別に月単位で支給されています。
無期雇用転換ルールが運用され始めた2018年当時、一般派遣社員には通勤交通費が支給されないことが普通だったので、「通勤交通費支給は無期雇用転換のメリットだ」とか言われていました。
2020年以降、同一労働同一賃金が導入され、一般派遣社員には通勤交通費が支給され……てるはずですよね?
ただこれもねー。
時給と別に支給する場合と、時給に交通費相当額を含める場合があると、風の噂に聞いています。
派遣社員同士でお給料の話ってしないのでネット情報です(←鵜呑みにしちゃダメなやつです)
いずれにしろ、一般派遣社員と無期雇用派遣社員で算定方法が異なれば差額が出る可能性はあるので、営業担当に確認して電卓を叩いてください。
私はお給料関係についてはとにかく電卓を叩きまくりました。ドケチなので。
転換型無期雇用派遣社員には退職金が出る?
同一労働同一賃金が導入されたことで、無期雇用派遣社員に退職金が出るようになるというウワサが流れていました。
これっていわゆる正社員型派遣のケースじゃなくて?
少なくとも、私は営業担当者から退職金は出ないと説明されています。
個別具体的な話にあたるので、営業担当に聞いてみてください。
最後に
無期雇用契約には有期雇用契約とは異なる独自のメリットデメリットがあります。
デメリットが大きいと感じれば、無期転換せず一般派遣社員を続けるのもひとつの考え方だと思います。
繰り返しますが、一般的な話は厚生労働省の有期契約労働者の無期転換ポータルサイト、個別具体的な話は派遣会社の営業担当に確認してください。
インターネットの情報は時々間違っているので、鵜呑みにするのは危険です。
と、言いたいがためにこの記事をしたためました。最後までありがとうございました!