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新型出生前診断(NIPT)認可施設の遺伝カウンセリング後にNIPTを受けないことにした理由

お盆の間に、朝のテレビで、認可外施設での新型出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査:NIPT)の件数が増えているというニュースを見ました。

かくいうわが家は妊娠が分かってすぐ、NIPTを受けるつもりで大学病院(認可施設)の遺伝カウンセリングを受けました。結果、NIPTは受けず、妊娠初期と中期に通常の妊婦健診よりも精密な超音波検査を受けたという経緯があります。

ニュースを見ていたら記憶の蓋が開いたので、今回はそのあたりのことを書いてみようかと。

出生前診断は生命倫理に関わる話で、専門家の意見も分かれていますし、いまだ結論も出ていません。この記事はあくまでもわが家ではこう考えたという話だということは予めご了解ください。

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新型出生前診断(NIPT)について

NIPTとはどういう検査なのか

NIPTは「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」「母体血胎児染色体検査」「無侵襲的出生前遺伝学的検査」などいろいろな名前で呼ばれています。

方法としては妊婦(10週~22週)の血液を採取し、血漿中に存在する胎児の染色体断片を分析することで、胎児に染色体異常(21トリソミー症候群、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群)があるかどうかを検出します。

NIPTを含めた出生前診断については、NIPTコンソーシアムの説明が分かりやすいと思います。

NIPTコンソーシアム:母体血胎児染色体検査の遺伝カウンセリング
NIPTコンソーシアム:NIPTコンソーシアムの使命や活動、臨床研究の目的や課題や実施施設、母体血胎児染色体検査の遺伝カウンセリング。検査を検討されている妊婦さんの問い合わせ。

NIPTの検査対象となる妊婦

NIPTの検査対象となる妊婦は、本人の検査希望に加え、年齢や染色体疾患の可能性に基づく条件が設けられています。認可施設であっても年齢以外の条件は施設によって若干異なる場合があるので、各施設のホームページなどで確認が必要。

わが家の場合は、高年妊娠(分娩予定日に35歳以上)に該当してます。

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わが家が出生前診断を必要と考えた理由

妊娠判明時35歳の高年齢出産だった

わが家は妊娠が判明した時点で私35歳、夫40歳の高年齢出産で、先天性疾患のリスクは両親の年齢が上がるごとに増すと言われていたので心配でした。

出生前検査を検討した背景に、パーフェクトベビー願望がなかったかと言われればゼロではないと思います。また、検査で陽性と判定された場合に諦める選択をする可能性も頭の中にはありました。

障害を持った子どもが生まれた場合、産んで育てるためにクリアすべき課題がいくつかあると感じていましたし、クリアできなければ生まれてきた子どもの人生に困難を背負わせることになると思っていたからです。

  • わが子に障害があったとき、受容する自信がなかった
  • 実家が遠方かつワンオペ育児という環境的障害があった

少しだけ詳しく書きます。

わが子に障害があったとき、受容する自信がなかった

産んで育てるための課題のひとつが、わが子の障害を受容できるかです。正直、私はわが子になにかあった場合、受容する自信がまったくありませんでした。

親としてわが子の障害を受容できるか

ドライな言い方をすれば、障害とは心身の機能に不具合のある状態が固定していることなので、障害がなければ当たり前にできることがサポートがなければできない、あるいはサポートがあってもできないということに人生の中で何度も直面します。

そして、機能面の問題なのに他者と比べた優劣という価値判断を持ち込んでわが子を責めてしまわないか、ひいてはわが子の存在を否定してしまわないか。人生の中で「できない」に何度も出会うわが子のありのままの現状を常に承認し、人生の意味と自己肯定感を持てるように育ててやれるのか……などなど、いろんな想いが頭の中にありました。

というのは、(絶対ではないけど)親に受容されないだけで子どもの人生はハードモードになり得ると思っているのがあって。私自身は障害を持たず生まれましたが、親にとって「子どものありのままを認める」ことがいかに難しいか、子どもの立場でイヤになるほど体験したので……

わが子が自身の障害の受容に直面した時に親として受容できるか

また、子どもが自身の障害の受容に直面し、親に向かう矛先を丸ごと受け止めてやれるのかどうかも大きな課題だと感じていました。

この背景には私自身が生育環境に起因する病に苦しみ、酷いときは年単位で休職した経験があります。当時、生産性のない自分を呪い、こんなふうに生み育てた親を恨んだ頃の当時の心境と言ったらなかったので……

実家が遠方かつワンオペ育児という環境的障害があった

産んで育てるための課題のふたつめが育児環境

わが家は転勤族、ワンオペ、実家が遠方でして、ついでに言うならエレベータのない古い団地住まいです。こういう環境って最近は普通だと思いますが、子育てをする環境としては明らかに悪条件ですよね。

こんな環境に障害を持った子どもが生まれた場合、環境を変えずに子育てすることはまず不可能だと考えました。

住居は住み替えが必要でしょうし、定期通院や長期入院などが必要なら付き添いもいるし、その人員をどう確保するか。保育所に預けられない場合は代替施設が必要で、施設が近隣になければ仕事はどうするのか。祖父母の手を借りる前提で転居するのか……その場合、夫の仕事はどうするのか?単身赴任?子育て要員が足りないのに?などなど。

子どもを持つことの深刻さをいちばん重く考えてたのってこの時期で、私たち夫婦がそれを許容できるのかどうかを知りたいという想いが強かったです。

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大阪大学医学部附属病院の遺伝カウンセリングの体験談

ここからは遺伝カウンセリングから超音波検査までを時系列で。

妊娠判明後すぐに産院に相談

私は妊娠が判明し母子手帳をもらう直前の時期に産院に相談しました。相談したとき先生はなんだか不機嫌な様子で、近隣で出生前診断を実施している病院を教えてくれました。

多分ですが、先生は出生前診断についてストイックな考えを持っている人だと思います。生まれるまで性別すら教えない主義なので、相談した相手が悪かったとしか……

阪大病院に電話で問い合わせ(妊娠8週)

実施施設である大阪大学医学部付属病院(阪大病院)には自分で問い合わせました。すると、

  • 希望者が多いため初期の妊婦(妊娠8~10週くらい)しか受け付けていない
  • それでも枠がかなり限定されている
  • NIPTの前に必ず遺伝カウンセリングを受ける必要がある
  • かかりつけの産科の紹介状が必要である

ということがわかりました。

※阪大病院の出生前診断の予約受付方法は、2019年7月より掛かりつけ医療機関からのFAXに変更されています。

紹介状をお願いした時、産院の先生はやっぱり不機嫌な様子でした。お願いした相手が悪かったとしか……

TsumuRi
TsumuRi

NIPTは妊娠22週まで受診可能だと思っていた私、この時点で意外と時間がないことが判明、超あせりました。阪大病院への問い合わせが妊娠8週後半、期限が妊娠10週でしたから……

阪大病院を選んだ最大の理由は距離

そうそう、阪大病院を選んだ理由の中でいちばん大きいのは、距離が近いことです。

出生前診断だけでも数回受診しますし、もし赤ちゃんに何かあれば転院もあり得るので近いに越したことはないと思って。別件で受診したことがあり親しみを持っていたことも大きかったと思いますが。

阪大病院で遺伝カウンセリングを受ける

妊娠9週目の終わり、夫と2人、阪大病院で遺伝カウンセリングを受けました。

大学病院なので初診の受付は平日の午前中のみ。診察券は持っていたけど産婦人科はあくまでも初診。初診の列に並んで手続きをしました。知ってたけど行列長いです

産婦人科の診察までもしばらく待ちました。知ってたけど待ち時間長いです

産婦人科の診察は問診の後に遺伝子診療部に行くように告げられたくらいでした。

遺伝子診療部の部屋の前でもしばらく待ちます。予約しているとは言えそこそこ待ちます。知らなかったけど待ち時間長いです

遺伝子診療部での遺伝カウンセリングは1時間程度でした。

そもそも遺伝とは何なのか?という話から始めて、障害、遺伝性疾患、染色体異常による先天性疾患の予後、出生前診断の種類や特徴、検査で分かることや分からないことなど、分かりやすいスライドを用いて本当に丁寧に教えてくれましたし、素朴な疑問にも徹底的に付き合ってくださいました。

説明してくださった方はあくまでも中立の立場で、出生前診断を受けるも受けないも私たち夫婦の自由意志に任されているという印象が強かったです。どうした方がいいというアドバイスはありません。考える材料を提供し、意思決定をしやすくするということなんだろうなと思いました。

NIPTを受けるか迷いながら次回の予約を取る

遺伝カウンセリングの後、産婦人科に戻って次回の予約を取りました。

産婦人科に戻った時点ではNIPTを受けるかどうか迷っていました。ある程度予習をしていたはずなのに遺伝カウンセリングを受けてようやく理解できたことが多すぎたし、自分たちがもしかするとお腹の赤ちゃんの命の選択をすることになるかもしれないという状況を、改めて突きつけられたことがすごく大きかったのです。

それから数日でNIPTを受けないことに決めた理由

結果的に、それから数日で私たち夫婦はNIPTを受けないことに決めました。

  • NIPTは3種類の染色体異常を検出する
  • NIPTで分かることは3種類の染色体異常の有無である
  • 出生前診断で異常が検出されない=障害がない、ではない

これらを遺伝カウンセリングで改めて確認し、わが家に必要な検査はNIPTではないと結論しました。

少しだけ詳しく書きます。

NIPTは3種類の染色体異常を検出する

遺伝カウンセリングを受けるまで、私たちはNIPTを受ければ生まれてくる赤ちゃんに障害があるかどうかがほぼ分かると誤解していました。

最初に書いたとおり、NIPTは3種類の染色体異常(21トリソミー症候群、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群)を検出する検査です。これら3種類の染色体異常が、赤ちゃんの染色体異常に占める割合は2/3程度、さらに、先天性疾患の中で染色体異常によるものは25%程度という事実があります。

2/3×25%=17%

素直に、残りの83%は?と思いました。

NIPTで分かることは3種の染色体異常の有無である

さらに、NIPTは3種類の染色体異常の有無を検出するだけの検査です。程度は分かりません

遺伝カウンセリングでは、NIPTで検出できる先天性疾患を持って生まれた赤ちゃんの予後の話を聞きました。特に21トリソミー症候群(ダウン症候群)は本当に個人差が大きく、50~60代まで幸せを感じながら生活する人も多いそうです。

その話を聞き、自分たちが染色体異常の有無だけにとらわれていて、程度の違を見落としていたことを自覚しました。

出生前診断で異常が検出されない=障害がない、ではない

また、出生前診断で異常が検出されないということが、障害がないことを意味しないこともはっきり認識できました。

遺伝カウンセリングの話の中心は先天性疾患ですが、出生前診断で検出できず、ある程度年齢を重ねてようやく判明する機能面の障害もありますし、出産時や出生後に障害を持つようになる可能性もゼロではありません。

結局、NIPTの結果が陰性だったとしても実際は産んで育ててみるまで分からないと感じましたし、この時点で検査の結果に関わらず産もうと決意できたんですよね。

そして、検査結果に関わらず産むならば、NIPTはベストな選択ではないと思ったので受けるのをやめました。

その後2回の精密超音波検査を受けました

NIPT以外の出生前診断の方法に、超音波マーカー検査という方法があります。これはとても精密な超音波検査(エコー検査)で、先天性疾患の兆候を画像的に検出するというものです。

少なくとも形態異常についてはNIPTで検出できる3つの染色体異常によるものに加え、それ以外の原因によるものも検出されるため、1回の検査がカバーする異常の範囲はNIPTより広いと考えたんです。(ただしNIPTで検出される疾患でも超音波検査で判別できる形態異常を伴わない場合は当然見落としますし、感度や的中率は低いです)

私は妊娠12週で初期の超音波マーカー検査を、妊娠18週で中期の精密超音波検査を受けました

結果的に、超音波検査で形態異常は検出されず、わが家はそれ以上の検査はしませんでした。

羊水検査などの侵襲的検査には低確率ながらも胎児にとってのリスクがあり、超音波検査で異常が検出されず、結果に関わらず産むと決めた以上、お腹の子にリスクを負わせたくないと思ったので。

産婦人科の先生は「現時点で超音波検査で分かる異常がなかったというだけのことで、それ以上のことは超音波検査では分かりません」と検査の限界を強調しておられましたが、一連のカウンセリングや検査を経て、ようやく腰を据えて出産に向かうことができるようになったと思っています。

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遺伝カウンセリングを受けて良かったこと

以下の理由から、私自身は遺伝カウンセリングを受けて本当によかったと思っています。

  • 先天性疾患や障害についての誤解を正すことができた
  • 各検査法のカバー範囲や限界を知ることができた
  • 出生前診断の後の意思決定のプロセスで考えるべきことが明らかになった

出生前診断の情報を入手するのは容易になっていますが、情報を正確に、我がこととして捉え、意思決定するプロセスは困難なままです。

少なくとも私は、遺伝カウンセリングを受けるまでいろいろ誤解もしていたし、意思決定のプロセスで考えるべきことをよく分かっていませんでした。また、出生前診断を受けるかどうか、検査の結果を受けてどうするかをじっくり考える時間があまりなかった上、判断が重大なので考えること自体がかなりストレスになったとも思います。

そんな状況の中、考える材料を提示してもらえ、中立の姿勢で向き合ってくれる他人の存在は本当に貴重でしたし、おかげで本当に納得してお産に向かえたと思います。

出生前診断については断片的でやや偏った情報を目にすることが多いので、正確で中立的な情報が一般の産科でも積極的に提供されればよいのに……と強く思っています。

TsumuRi
TsumuRi

私の書いたこの記事も断片的で偏った情報のひとつだと思います。超音波検査で形態異常が検出されず、生まれてきた子どもには3歳まで個性の範囲を超える異常が認められていない、一人の母親の体験談にすぎないので……

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出生前診断を理解するための参考書

というわけで、この記事を書くにあたって参考にしたウェブサイトや、遺伝カウンセリングを受けた時期までに読んだ書籍(マンガを含む)を最後にまとめて紹介しておきます。

ウェブサイト

NIPTコンソーシアムのウェブサイト

この記事の中で何度かリンクしたサイトですが再掲。

NIPTコンソーシアムとは、適切な遺伝カウンセリング体制に基づいて検査実施するための、遺伝学的出生前診断に精通した専門家の作る組織です。

ここは専門家が作っているサイトなので内容は正確ですし、それなり分かりやすいです。費用についてもざっくり記載されています。

GeneTech株式会社のウェブサイト

GeneTech株式会社はNIPTコンソーシアム施設で実施された検査の約88%を受託している検査機関です。

図表やイラストが豊富で、説明が詳しく丁寧で分かりやすいです。字が多いのが苦手なら、こっちの方がいいかなと。妊娠中って、字ばっかりのサイトを見ると目が滑りますよね(私だけ?)

TsumuRi
TsumuRi

知ってるくせに字ばっかりの記事にしてすいません…

書籍(マンガも含む)

活字の本よりもマンガの方がとっつきやすいと思うのでマンガから。

コウノドリ(23巻)

産婦人科を舞台にしたマンガの代名詞ですね。妊娠出産に関わる厳しい現実を分かりやすく描いており、ドラマ化もされました。

私も妊娠前から読んでおり、妊娠中はドラマ(第1期)を見ていました!

2017年ドラマ版第2期の第10話で、放送当時は原作になかった出生前診断のエピソードが放送されたのも記憶に新しいです(こちらは産後に見ました)

現在は、原作マンガ23巻に出生前診断のエピソードが入っており、様々な視点から出生前診断が語られていて分かりやすいと思います。講談社のサイトで1話分ほど試し読みできます。

ブラックジャックによろしく(NICU編)

こちらは大学病院の研修医の視点から、医師の臨床研修や医療の在り方に問題を投げかけた作品。

これは古い作品で、妊娠するかなり前に読みました!(大学生の頃かも)

出生前診断に触れたエピソードはありませんが、3~4巻のNICU編に、不妊治療の末に早産で産まれたわが子がダウン症候群であることを告げられ葛藤する夫婦が登場します。障害の受容という観点で考えさせられるエピソードだと思います。マンガ on Webで無料公開されてます(2019年8月現在)

作者のマンガ家としての在り方自体が業界に対する問題提起になっていて熱かったりしますが、それはまた別の話。

出生前診断(ちくま新書)

認定遺伝カウンセラーとして遺伝カウンセリングに従事している著者の手で2015年3月に書かれたもので、正確な知識と現場での経験を元に、出生前診断について詳しく解説されています。

これは妊娠が判明した頃に読んだ記憶。

良くも悪くも専門家が書いた本なので、初歩的な遺伝や統計の知識がないとやや理解が難しいところもあります。

出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来(朝日新書)

こちらは2015年4月に出産ジャーナリストの方が書かれたものです。

こちらも妊娠が判明した頃に読みました。

出生前診断の基本的な知識に加え、社会的な側面についても理解しやすいと感じました。

TsumuRi
TsumuRi

私が遺伝カウンセリングを受けた時期は2015年の夏なので、それ以降に出版された書籍についてはノーマークですみません。現在はさらに新しい書籍もあるので探してみてください!