こんにちは、つむりです。
大阪北部地震から10日余り、当地では余震がだいぶ少なくなってきました。わが家の生活は落ち着いてきたものの、頭の中の多くを地震のことが占めています。地震に関する夢を見て夜中に飛び起きたり、頭上を警戒するあまり電柱にぶつかったりが続くので、そろそろメンタルヘルスを点検したほうがよいと感じ始めました。
今回はセルフチェックを兼ねて地震後のストレス対策をまとめます。
その前に、専門家の手による正確かつ詳しい情報へのリンクを紹介します。是非ご覧になってください。
- 被災されたみなさまへ(こころの健康センター) / 熊本市ホームページ
熊本地震の被災者向けPDFが提供されています。とても易しい内容です。リラクゼーション法やストレスチェックも載っています。 - 被災されたお子さんをお持ちの家族の方へ
子どものストレス反応と家庭でできるケアのリーフレットです。お子さんのいる家庭は必読。 - こころのケア公開資料│全国精神保健福祉センター長会
被災者の年齢別(小学生~大人)、立場別(一般人/支援者)になった、災害後の心のケアの資料です。 - 第2章 心のケア 各論:文部科学省
ストレスによる心身の変化の解説です。
ごく個人的な体験談に興味がある方は引き続き本編をご覧ください。
災害時の心身の防衛反応
災害時は強いストレスに反応して心身や行動に様々な変化が現れます。
- 興奮しやすくなったり
- 活動的になったり
- 警戒心が強くなったり
- 不安を感じやすくなったり
- 食欲が低下したり
これらは非常事態から身を守るため自律神経系や内分泌系(ホルモン)が働くことによる自然な反応で、通常は時間の経過とともに治まります。
災害時の心身の防衛反応(私の場合)
地震直後から3日程度は活動的になりました。昼間は2歳児を世話しながら家の中の片付け、安全対策、買い出しを一気にやりました。一方で夜は寝つきが悪く、寝ついても娘の夜泣き、余震、地震の夢などで起きることが多かったです。
地震発生から4日目、お風呂に入った日からしっかり眠れるようになりました。その翌日から急激に疲労を感じるようになりました。
地震直後の3日間、緊急事態に対応すべく心身がフル稼働していたのが、山を越えたと感じたところで燃え尽きたのだと思われます。
防衛反応への対策は「安全確保」後の「休養」「栄養」「リラックス」
地震から10日あまりでは疲労はまだまだ癒えません。
安全を確保した上で十分な休息や栄養を取ることが必要です。
現実的にはするべきことが残っていたり、余震の心配があったりと不安が多い時期でもあるため、行動し続ける方が気分的に楽なところもありますが、心身の声に耳を傾け、けっして無理をしませんように。
不安や緊張が強いときは、呼吸法や軽いストレッチなどがよいことがあります。5分10分あればできるので、試してみてください。
防衛反応への対策(私の場合)
休養
娘が眠っている間、眠れなくてもなるべく横になるようにしています。
眠れないとイライラして休養になっていない気もしてしまいますが、横になって動かず、目を閉じているだけでも体力は温存できるそうです。
栄養
朝昼晩と食事を取っています。
どうしても簡単なものになるので、栄養バランスは若干偏っている気はします。
不安や緊張への対処
時々、息が詰まるような感覚があるので、そのときは呼吸法で対処しています。思い出したときにストレッチもしていますが、けっこう身体がこわばってますね。
呼吸法やストレッチのときは「今、ここ」に「いつもどおり」に存在している自分を意識するようにしています。
災害ストレスによる症状
非常事態下では大きすぎるストレスに圧倒され、以下のような症状があらわれることがあります。
- 時と場所を選ばず災害の場面を思い出して苦痛を感じたり感覚が蘇ったりする。
- 災害に関連する悪夢を何度も見る。
- 災害を連想させるものに触れると苦痛を覚えたり、身体が反応する。
- 災害以前は感じられていた幸福感、満足感、愛情などを感じられなくなり、恐怖感、絶望感、悲しみ、恐怖、警戒、罪悪感などに支配されてしまう。
- 外から自分を眺めている感覚になったり、現実感や時間感覚を失う。
- 災害に関する記憶が抜け落ちる。
- 災害そのものや、災害に関連する苦痛な感情や思考を想起させるものを避けようとする
- 睡眠に支障が出る(熟睡できない、寝つけない、すぐ起きる)。
- 苛立ちや怒りにより暴力的になったり、言動が激しくなったりする。
- 警戒心が異常に強くなったり、ささいな刺激に対して異常に反応する(驚き、恐怖感)
- 集中力が低下する
これらは自然におさまることもありますが、症状が強かったり長期化したりで、苦痛や生活への支障があるようならば専門的なケアを受けた方がよいです。
災害ストレスによる症状(私の場合)
地震発生から数日は現実感や時間の感覚に乏しく、地に足がついていませんでした(これは時間が経ってから自覚しました)。
同様に、私には地震発生時の音の記憶がありません。他の人が「すごい音がした」と言っているのを聞いて初めて自覚しました。聴覚だけ解離したんだろうか?
今は仕事中にいつの間にか地震のことを考えていて集中できなかったり息苦しくなったり、夜中に地震の夢で飛び起きることもあります。最初に書いたとおり、頭上を警戒しすぎて電柱にぶつかったりもしています。
気分の落ち込みはそれほどありませんが、少し街を離れていつもどおりの日常が回復していく様子を見ると、私の周囲に急に透明な膜があらわれて、中に閉じ込められるような感覚を覚えて苦しくなります。絶望的な断絶感とでも言えばいいのでしょうか。地震が本当には起こっていない別の世界に立っているようで、それなのに今感じているこの苦しさは何なんだと思うこともあり、現実感がやや混乱しています。
今は疲労が前景にあるので、もう少し疲労が回復したら隠れているものがあらわれる可能性があるとは思っています。
専門的なケアにつながる方法
専門的なケアにつながる方法として、地震後のメンタルヘルスに関する相談窓口が利用できます(自治体による)。ビラや回覧板での案内、自治体のホームページなどからも情報を得ることができます。かかりつけの精神科があれば相談するのもよいかと。
地震による家財などの物理的な被害も大きなストレス要因になり得ますが、物理的な被害についても専門の相談窓口が設けられています。
とりあえずは今これを見ている端末で、相談窓口の連絡先を調べて端末に登録しておくのがよいかと!必要なときにボタンひとつでつながると思えば、それだけでも少し安心ですしね。
医療機関への受診や自治体窓口への相談に遠慮は不要です。
- 「自分の被害なんてたいしたことなかったのに」
- 「もっとひどい被害を受けた人もいるのに」
- 「自分は心が弱いのかもしれない、情けない」
ストレスへの耐性は個人差が大きいので、物理的な被害が同程度でも辛くなる人は辛くなるし、大丈夫な人は大丈夫です。こんな気持ちはすべて棚に上げておいておきましょう。
災害は生物の本能的欲求である生存や安全を脅かす非常事態なので、ストレスに圧倒されてもしかたがありません。今いちばん大切なことは、苦痛を取り除いて明日も生きていくことです。
専門的なケアにつながる方法 (私の場合)
私の住む街では、地震後の専門的ケア窓口について自治会長が各戸にビラを配布、それとは別に回覧板で案内されました。
来週以降も症状らしきものが改善しなかったり悪化したりすれば、地震の前からお世話になっている精神科の先生への受診を前倒しして相談する心づもりをしています。
実はここに書いていることのほとんどは地震のずっと前に先生に教えてもらったことを元にしています。私は災害ストレスへの対処方法を知っているという事実が、今の私を支えてくれています。まことに縁とは奇妙なものです。
災害時の子どもの反応と親にできる対処
日本児童青年精神医学会作成のリーフレットが分かりやすいです。
→被災されたお子さんをお持ちの家族の方へ
幼い子どもは感じているストレスを言葉で表現することができませんが、ストレスに対する反応は言葉以外の方法、例えば行動や遊びを通した表現や、睡眠、食事、機嫌の変化としてあらわれます。
子どもの変化を見逃さず、いつもより密に向き合って安全と安心を与え、生活を整えることが家庭でできるケアですが、家庭でケアをしても本人が辛そうな様子が続くならば、やはり専門的なケアを受けた方がよいです。
災害時の子どもの反応と親にできる対処(私の場合)
地震後、娘がなかなか昼寝をしないこと、夜泣きで起きてしばらく泣くことが何日か続きました。地震から数日間は食欲が落ちました。
地震で倒れたメタルラックを起こした後も「たおれてたねえ~」「こわれてたねえ~」と何度も何度も繰り返していましたし、地震の影響かイヤイヤ期の本格化かはわかりませんが、「ギャー!」と泣くまでがやたらに早くなりました。
保育所が休所したのもあり、しばらく一緒にいて娘が甘えてきたらなるべく抱っこして過ごし、落ち着いて遊べる場所(子育て支援センター)に連れ出して気分転換させました。
本人に怖い思いをした記憶があるのかどうかは分かりませんが(だって言語が未発達なんだもん…)、私は「お母さんがしばらく一緒にいて嬉しい」という記憶で上書きしようと考えていました。
共感疲労を起こさないために
今回の地震の影響を受けなかった地域の人へ向けて。
災害後はテレビや新聞などが競うように現地の情報を流します。近年はSNSで当事者の書き込みや写真を目にすることも多い。
現地の被害の情報、とりわけ悲惨な映像に繰り返し触れることで、直接的に体験していないのにストレスによる影響を受けることがあります。共感疲労という名前で知られています。
被災地の外の人はどうか平穏に暮らしてください
仕事などで現地の被害状況を知る必要がある方や、現地に援助に入る方を除いては、あまり情報に触れないようにすることで共感疲労から身を守れますので、どうか情報に振り回されず、これまでどおりに平穏な生活を送ってくださいますように。
現地はまだ疲れています。その上、他の地域の人たちまで巻き込まれて疲れてしまったら、いざというときにほんとうに困ります。どうかよろしくお願いします。
共感疲労防止策(私の場合)
過去の話になりますが阪神淡路大震災や米国同時多発テロの直後に繰り返しテレビの映像を見てしまい、ふとした瞬間に映像が浮かんでしんどくなったり、悪夢を見ることがありました。この時の経験から共感疲労について予備知識があったので、東日本大震災の時には映像を見ることをなるべく避けました。
大阪北部地震でテレビを見たのは地震発生当日の午前中くらいです。テレビでは半径500mの状況は分からないし、現地にいると地震全体の被害状況よりも、最寄りのスーパーで食料や水を確保できるかどうかの方が重要で、自然とテレビの視聴を避ける結果になりました。
まとめとして
地震からある程度の時間が経ち、生活が落ち着いてきたところで心身の状態の点検が必要です。
また、苦痛や日常生活への支障があるようならセルフケアなり専門的なケアなり必要に応じた手当てが必要です。
本当に大切なことですので、専門家の手による正確かつ詳しい情報をご覧ください。
- 被災されたみなさまへ(こころの健康センター) / 熊本市ホームページ
熊本地震の被災者向けのPDFが提供されています。とても易しい内容です。リラクゼーション法やストレスチェックも載っています。 - 被災されたお子さんをお持ちの家族の方へ
こどものストレス反応と家庭でできるケアのリーフレットです。お子さんのいる家庭は必読。 - こころのケア公開資料│全国精神保健福祉センター長会
被災者の年齢別(小学生~大人)、立場別(一般人/支援者)になった、災害後の心のケアの資料です。 - 第2章 心のケア 各論:文部科学省
ストレスによる心身の変化の解説です。