今日はわたしの人生観を変えたアドラー心理学と、アドラー心理学の考え方を取り入れた子育てのおはなしをさせてください。
わたしはアドラー心理学の考え方が大好きなのでとても暑苦しく語りますが、しばしお付き合いいただけたら嬉しいです。
アドラー心理学ってなに?
アドラー心理学は2014年頃からブームになっているので、名前を聞いたことのある方も多いと思います。
アドラー心理学はアルフレッド・アドラーが提唱し、その弟子たちが発展させてきた心理学の体系で、アドラー自身は「個人心理学」と呼んでいたそうです。
アドラー心理学ブームのきっかけは「嫌われる勇気」の出版でした。正直に白状すると、わたしはこの本は読んでいません。ブームになった2014年以降に「アドラー本」が大量に出版されましたが、育児をテーマにしたものを数冊読んだだけです。
というのは、わたしにはブーム以前に出会い、わたしの人生観を変えた2冊があったからです。
わたしの人生観を変えた2冊
わたしの人生観を変えた2冊には、図書館で出会いました。2007年くらいだったかな。
当時、アドラー心理学はマイナーで、一般向け書籍もほとんどなかったので、これはほんとうにラッキーな偶然の出会いだったと思います。よく見つけたなと自分でも思う。
このユーモアあふれる2冊の中で繰り返し語られる、信頼と尊敬を軸とした開かれた「共同体」のありようは、わたしを「勇気づけ」るには十分なものでした。
幼少期からそれなりにいろいろあり(内容はぼかしますが…)、すっかり打ちのめされて劣等感ばかり強かったわたし。いわゆる抑うつや希死念慮に悩まされた時期も長く、薬を服用してもしばらくしてぶり返すことを繰り返していました。
信頼できる主治医との出会いもありましたけど、治療過程でこの2冊に出会えたことが、わたしの絶望的な人生観をすっかり塗りかえて治してくれたと思ってます。
でもアドラー心理学風に言えば、わたしには元々課題を解決する力が眠っていて、「勇気づけ」によって、わたしが新しい「ライフスタイル」を選びとった、つまり、勝手によくなったのだということになるんだと思う。
だからみんなアドラー心理学で人生を変えようなどと大それたことを言うつもりはまったくありません。だって他者の人生は他者の課題で、そこにわたしがずけずけ踏み込むことはそれこそ他者の勇気をくじくことになる。
でも、エッセンスを知ることで人生の選択肢は少し増えると思ってるのも事実です。

アドラー心理学用語をちょっとだけ
これまでになんのことわりもなく「共同体」「勇気づけ」「ライフスタイル」など、アドラー心理学用語を使っていますので、トーキングセミナーからちょこっとだけ抜粋と要約します。
説明なんて読んでられないというあなたは、最重要ワード「勇気づけ」だけどうぞ。
共同体と共同体感覚
アドラー心理学の考える健康なパーソナリティの要素は、自分を受け入れていること、世界を信頼していること、貢献感を持っていること、誠実であることの4つで、これらをまとめて「共同体感覚」と呼んでます。
「共同体」とは自分が所属する集団、すなわち家族、学校、職場、社会などすべてのこと。「共同体感覚」を言い換えると、自分は共同体の中にいて、共同体の一員で、共同体に養われていて、共同体に貢献しているという感じのこと。

ライフスタイル
性格やパーソナリティのことをアドラー心理学では「ライフスタイル」と呼びます。
そしてライフスタイルは自分で選択したものであるというのがアドラー心理学の立場。ただし、一般的には10歳くらいまでにライフスタイルの発達は止まり、その後は固定したライフスタイルでやっていくことが多いとしてます。
健康的なライフスタイル(自立型)の姿勢は「わたしは基本的にはOK」で、他者と協力して共同体に貢献しようという意思を持ちます。
一方で、不適切なライフスタイルはその後の人生で困難に直面することが多くなります。


勇気づけ(エンカレッジメント)
大人でもこどもでも、健康的に建設的に暮らしていこうと思えば勇気が絶対に必要です。勇気は外からもやってくるし、自分で自分を勇気づけることもできます。
自分の周囲の人をどうやって勇気づけるか考えるとき、「ほめる」ことは「勇気づけ」にはならず、むしろ「勇気くじき」として作用します。
たとえば「えらいね」「がんばったね」など、「あなた」を主語にした言葉でほめるとき、無意識に「あなたはよい」「あなたは悪い」というのを、こちらが判断しているから。あなたがどうであるかを判断するということは、あなたに対してわたしの方がえらいというタテ関係があるということの無意識の表明。関係性によっては「カチン!」ときて逆効果になることも。
勇気づけの基本は「ありがとう」や「うれしい」など、わたしを主語にしたメッセージ。それも、特別な瞬間に言うのではなく、あたり前に毎日起こっていることに注目します。
特別な瞬間だけ勇気づけをすると、特別なことをしないと自分はダメなのかと感じるので勇気づけになりません。

「ありがとう」は、わが家ではものすごく効きました!
なんとなく家庭内の雰囲気がよくなり、家事分担をガチガチに決めていた時よりも、夫婦ともに家事をしたい気分になったという驚きの効果。
https://tsumurinote.com/thank-you/
アドラー心理学の表看板は「育児への応用」
「勇気づけ」の話をしたところで、ようやく本題に入れました。長かった……!
実は、アドラー心理学の表看板は「育児への応用」で、先ほどの「トーキングセミナー」にこどもとの関わり方が書かれているほか、最近ではアドラー心理学ベースの育児本が何冊も出ているので取り入れやすくなったなーと思います。
わたしが好きなのは「トーキングセミナー」ですけど、文字が多くて図解が少ないのが弱点です。ユーモアにあふれているので読みやすい本ではあるんですけどね。
育児でも基本は「勇気づけ」だけど…
育児への応用でも、基本が「勇気づけ」であることは変わりないんですが、相手がこどもだからこそ気を付けた方がよいポイントがけっこうあります。
最初にトーキングセミナーを読んだときはこどもがいなかったので「へー」だったんですが、実際にこどもを持ってみると、まさに子育てあるあるで、こどもとの日々の関わりの中で、助けられてることがとても多いです。
というわけで、いくつか紹介してみまーす。
親の注目はすべてが「勇気づけ」になる
基本の「勇気づけ」が不足しているこどもの場合(大人も!)、適切な行動をしてもちっとも勇気づけてもらえないので、不適切な行動をして親の注目を引こうとする。そして大人が叱る、嫌な顔をするなどの注目が得られると、それが不適切な行動をする「勇気づけ」になってしまうという、なんとも恐ろしい話。
うちの2歳児、わたしがあまりかまわないでいると、机に登ったりイタズラをして、わたしが「こらー!」と言うとニヤッとするんですよ…。あまり繰り返すとイタズラが定着してしまいそうでちょっと困ってます。
こどもの課題に取り組めるのはこども本人だけ
アドラー心理学では、こどもであっても自分の課題を解決する力があると考えていて、親がこどもの課題に手を貸していいのは、こどもと対話をして、それが親子の共通の課題であると合意をしたときだけとしています。
親としてはこどもは不完全だし衝動的だし危なっかしいからどうしても先回りして手を貸したり口を出したりとお節介するんですけど、上から目線でそれをやられると、こどもとしてはまったくおもしろくないし反発するって言うんです。
また、そうやって親がこどもの課題を取り上げて、こども本人が解決する経験を積まないまま大人にしてしまって、いざ大人になったらいきなり「自立しろ!」って、むちゃくちゃですよね。
なのでわたし、まだこどもは2歳だけど、できることはなるべく自分でしてもらってます。見守っていたら2歳なりにある程度のことはするし、できなかったら「してー!」って持ってくるので、その時点で手を貸したらいいかなと。
ただ、朝のバタバタしてる時は、こどもを待てなくて、わたしが着替えさせたり靴を履かせたりとつい手を出してしまっていて、結果的にこどもが自分ではなかなかしたがらなくなってしまいました。
これほんとやり方を失敗したって思ってて、どうにか軌道修正したいんですが、定着しちゃってるのでなかなか難しいです。どうしたもんだか。
一方で、こどもを見守りつつまかせておいたおもちゃの片付けや食器の後片付けなんかは、言わなくてもけっこう自分でするので楽させてもらってます。お風呂上がりはしばらくはおむつも履かずに走り回ってますが、そのうち自分でパジャマを出して着てくれることが多いです。楽。
縦の関係ではなく横の関係を作る
親って無意識にこどもを少し下に見ているところがあって、あれしなさいこれはダメと指示や命令をしがちなんですけど、そういう縦の関係だとこどもはおもしろくなくて反発するし、こどもに力がついてくるとこどもとの権力争いに発展してこじれがちだとトーキングセミナーにありました。
だから権力争いからは早々と降りてしまって、お互いを尊敬して協力しあう横の関係作りをした方が楽ですよということ。
これを書いている今、うちのこはイヤイヤ期真っ盛りの2歳なんですが、自分の思いも出てきて、思いが通らないと全力で「ギャー!」って泣くんです。上から目線で「だめ!」「〜しなさい!」とか言うとさらに手がつけられなくなって、こちらもイライラするという悪循環になってしまって。
こりゃ疲れるわと思ったので、こどもとの権力争いからは素直に降りることにしました。
こどもの様子を見ていると、我が強くなってきたからと言って協力的な思いがまったくわけではなくて、関わりのある他者を喜ばせるのが楽しくてたまらない様子なんですよね。だったら楽しく協力できるようにした方がお互い楽なはず。
それで、指示や命令ではなく依頼するやり方に変えました。結果、こどもがその気になるまで待ったり、納得してくれないときは理由を説明したりで時間はかかるけど、全力の「ギャー!」がかなり減ったので、イライラも減ったし、こどもが協力することを楽しんでいるのを見ると嬉しいし、やり方は気軽に変えてみるもんだなあと思ってます。
まとめ︰アドラー心理学を取り入れることは生き方を変えること
この記事で書いたようなことをTwitterで気まぐれにつぶやいていたら、興味を持ってくださった子育て中のおかあさんがいました。
なにかおすすめの本でも紹介できたら気がきいてるんですが、わたしもそれほど何冊も読んでいるわけでもないし、子育て経験もやっと2年程度のビギナーなので、アドラー心理学ベースの育児本が何冊も出てるということしかお伝えできませんでした。
その後、本屋さんに行ってアドラー育児本の棚を見たところ、何冊もありすぎてこれじゃ選ぶのもなかなかたいへんだわと思いまして。
個人的な意見ですが、紹介されているテクニック自体はどの本もそんなに変わらないと思うので、何冊か眺めてみて、心の奥からじんわりと温かい感じが生まれてきたり、わたしもやってみようとわくわくしてしまうような本がよい本だと思います。
小手先のテクニックではなくて、生活に取り入れたときの肌感覚が伝わってくる本とでも言うのかなあ。
というのは、アドラー心理学を生活に取り入れるというのは、やり方を変えることでもあるけれど、同時に生き方を変えることでもあると思うからです。
勇気づけの基本「ありがとう」「嬉しい」を伝えることにしても、それを実践するためにはささやかな「ありがとう」「嬉しい」のネタをいつも探す生き方に変えることが必要で。
そして、生き方すなわち「ライフスタイル」を変えることには勇気が必要なんですけど、育児中のおかあさんって家事も育児もなんなら仕事まで抱えてて、基本的には疲れてるから、新しいことをする勇気なんてなかなか自分の中からはわいてこないと思うんです。
わたしなんて元々が病んでたポンコツだからしょっちゅう折れるし、嫌になってキーッ!ってなるし、そのうちエネルギー切れでふとんに引きこもったりしてるし。そういう時こそ、わたし自身が勇気づけられることが必要なのに、誰も勇気づけてくれませんし。
そういうとき、読むだけで心の奥からじんわり温かい感じが生まれてきたり、わくわくしてしまうような本があると、読むことで勇気づけられて前に進めるのでとてもよいと思います。
わたしを勇気づけてくれた本、それこそが人生観を変えてくれたトーキングセミナーでした。こういう、人生を伴走してくれる本に10年前に出会えたこと、わたしはとても誇らしく思っています!